かつて結核が日本の国民病であったころ。インフルエンザが「感冒」と呼ばれていたころ。
濃尾平野の奥地でひっそりと地域の健康と保健を支えた診療所があった。
戦時中まで機能していたそれは現在主を失って、緑の中にその骸を晒している。そして、中は当時の面影をそのまま残しているかのような世界が広がっていた。
名を、S診療所‐洲原村診療所という。

見た目はまるで民家。 最初に見つけた人はすごいと思う。P1030867

入口をくぐるとその筋では有名なあの光景が
感動である。
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受付窓口
鳥居のような形
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すぐ横に薬の窓口
「投藥口」と書いて「くすりわたしぐち」と読む。 
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昔の病院や診療所は建物の中に薬局があって、私も幼いころ、地元の町立病院にかかったときは会計口のあたりで薬ができるのを待ったものだ。
今はたいてい隣に薬局ができたりしてるからなあ。そっちのほうが医師も薬剤師代やらかからなくて済むし、そもそも許可が下りなかったりするのかね。

入口の目の前は診療室
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他サイトさんの画像と比較すると、けっこう配置がかわってたりする。

床中に散らばる戦前の書籍や広告類。
ここには戦後のものはほとんど存在しない。
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「ウテナほゝ紅」・・・ ウテナ化粧品は戦後も有名であった化粧品メイカー。
「ウテナ白粉」を琺瑯看板や、ガラスマニアなら知らないものはいないだろう。

6月の名曲物語は「魔王」
NHKやラジオ講座のような雰囲気だ。
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解説文は「桂近乎」による。 落語家みたいな名前だが調べたところ、戦前から戦後期に活躍した音楽家、音楽評論家のようだ

床に何気なく落ちている新聞ももちろん戦前のもの
日付は「昭和八年 五月二十日 (土曜日)」。 時間が止まっている…
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「ラヂオ けふの番組」の欄がまた時代を感じさせる。
当時は庶民の近代的娯楽といえばまずラジオであった。

こういうの古本屋に持っていくと高いんだろうけど…
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どんな薬を出されたかわかりやすくするための札?
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銭湯の鍵に似ている

診療所なので薬の広告や納品書が多い。
画像を見てもらうとお分かりのように、訪問最初の時間帯が未明だったので結構暗かった。
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この薬が「最新」だったのはいつごろなのだろう…

薬剤のアンプルや医療器具の類もほとんど丸々残っている
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この器具によってどれだけの人々の命が助かったのだろうか
しかし助けられた人も、その助けた医師も、今はもうどこにもいない

脇にたたずむ分娩台
小さいながらも総合診療所であったようだ
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薬剤を調合する器具。
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さりげなく置いてある蚊取り線香
まさか打ち捨てられた当初からこうだったとは考えにくいし…
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少し燃やした跡がある。 万が一燃え移ったらどうなると思っていたのだろうか。

奥の天井近くに貼ってある訓示
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くわしくはこちらの記事へ
http://hanatare-ruins.doorblog.jp/archives/51689572.html

「ともかわ」 ではなく「わかもと」
しかし中身は薬剤ではなく、薬瓶のふたが大量に入っていた。
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切開用ハサミと鏡?
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これはぜひ読んでもらいたかったので載せた。
当時の世相がきちんと反映されている。
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それにしても昔の薬品のシンボルデザインはいつみても突飛抜け過ぎである。

進むと見えてくるのは生活スペースと営業スペースの狭間
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ラヂオが置かれている…

ツマミを回すとスイッチが入るようだ
回しますか?
                 ニア はい
                    いいえ


そして左手に
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廃墟フリークが憧れる、あの光景が広がっていた
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夢中になってシャッターを切る
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現代語に直すと「六価クロム」 猛毒である。
もちろん医療薬品ではない

気化した薬剤が理科室のようなにおいを漂わせていたこの空間。
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手前の薬品棚にはこんなラベルが
「MEDIC. COMM」はおそらく「medicine common」の略か?
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隣りの棚にはこんなラベル
退色してしまってわかりにくいが、「劇薬」と読める
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つまり、ラベルが赤い薬品はヤヴァイってことさ。
各残留薬品やら書籍の撮影の為この部屋に一時間半いたが、どおりでなんか頭が痛いと…(冗談じゃない)

詳しくはこちらの記事で
http://hanatare-ruins.doorblog.jp/archives/51687698.html

この部屋は玄関の裏方にあたる。
受付も投薬口も中身は一緒の部屋だったのね。
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これも有名な一枚。
伏字はこの物件を探訪したサイトの伝統なので
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下の本はおそらく数学の教科書
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なんでこんなものが。 ここにいたO先生という人物の持ち物だろうか。

薬品棚に収まっていたもの以外にも大量に薬品のアンプルや瓶が転がっている
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すみません、これ持っていったら取り替えてくれますか?
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敷居に散っていた広告
戦前の広告は一々仰々しい。 が、それがいい。
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陽もだんだん昇ってきました。
んじゃ先に行きますか・・・って
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完全に床が腐っている!
穴が空いてるわキノコが生えてるわで恐ろしいことに。
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天井もたわむにたわんで崩壊寸前。
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うわさには聞いていたが、この廃墟もあと数年耐えられるかどうかだな…

台所部分
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崩壊が進む

生活玄関方面
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算盤なんて何年ぶりにみただろう…
今の小学校でソロバンの授業はあるのかなあ。 自分のときはあったけど。

生活部分なのに普通にこんなのがある
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さて、二階へ上がりますか…
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画像曲がってるぞって?
…曲がってるのは階段のほうなんです。いやまじめに。洒落にならないって。


次回。その中へ続く
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