京都に戻って数日後。真夜中、部屋で廃墟系写真集を読んでいたら、近所の地名が出ていて二度見してしまった。

たいていの写真集には最後のページあたりに撮影場所のインデックスが載っている。目が留まったそれには「京都府 大谷鉱山理髪店」 とあった。
ノスタルジックな床屋さんで、当時の料金表からレバーで上げ下げするイス、整髪料の瓶、箒まで残っていてまったく荒らされている様子もなかった。そこから人だけが消えてしまったかのような、まさに廃墟美のつまった写真だった。
どうしてもっと早く気づかなかったんだ。早く探索すべきだここは。

というわけで行ってきました。 京都府亀岡市、大谷鉱山社宅群。
国道から曲がり、四国から戻る時に使った道をしばらくさかのぼると、なんとも風光明媚な街並みが表れた。
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酒蔵に、商品に埃が乗っている商店
これは鉱山廃墟という雰囲気じゃないぞ。

この呉服屋さんは朝6時だというのにカーテンも締めていない
店主さんが偉く早起きなのだろう・・・ たぶん
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万年ウェルカム状態

この一帯は「薭田野(ひえたの)佐伯」という街らしい
国指定無形文化財「佐伯燈籠」で有名な田野神社がある集落で、この神事は旧盆と五穀豊穣の祭りを兼ねた大変珍しいものなのだという。 その中では人形浄瑠璃もやるとか。 神事に人形浄瑠璃かあ、ホカイビトやクグツシが絡んでそうで面白いですね

通りの家々にはこんなのが懸けてある
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オロナミンCが飲みたくて通りに出ていたおばあちゃんに話を聞くと、「神輿につけた幣を使い終わった後、みんなでこうして飾る」んだそうな
近くに大きな大日如来堂があるのでそっち由来かと思っていた。
 
酒蔵がいっぱいあるからか、今では珍しくなったこの自販機も
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この界隈は篠山へ続く街道の沿線であり、昔は商業的にも農業的にもだいぶ栄えていたようだ。
やはりクグツシみたいな漂泊民がいたんだろうな

入り母屋の屋敷に土蔵が立ち並ぶ中にはこんな家も
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お医者様の家でござりまするか !

昔の消防器具が軒先に飾られていた
「龍吐水」、「雲龍水」とかいう、昔のポンプ放水車だ
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「萬延元庚申歳穐調」とある
たぶん「万延元メ庚申ノ歳ノ秋、調」って読むんだろう 万延は1860年の一年間しかなかったから時期がわかりやすくてありがたい
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「秋」の字に「穐」を使うのは芝居の引き札と同じで火災避けの意味があったのかな
その前に昔はみんな「穐」の字だったか

旧街道沿いの長閑な農村地帯
一見「鉱山廃墟」とは無縁そうな場所だが・・・
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それは突然現れる
鉱山廃墟とは思えない、まるでそこいらの廃屋のように建っている
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大谷鉱山社宅群に到着。
大谷鉱山は明治時代に開かれた銅鉱山である。戦後は一時期操業を停止したが昭和26年からタングステン鉱山として再開。昭和58年の閉山までこの農村に鉱山村を構えていたという。

これらの建物は閉山に伴って撤去された施設を免れたもので、四辻に集まるかのように社宅、購買部に診療所、理髪店が位置している。 知らない人が見たらただの廃屋にしか見えない建物だった。

購買部はだいぶ崩れている
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が備品の類は大方原型をとどめていた。
おお懐かしい、自分の世代でもまだ現役で動いているものがあったよ。
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あれは冷蔵庫か? 上には駄菓子を入れる角ビンが
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間取り的にここが正面なのだが、入口は別だったのだろう

蔦が綺麗だ。
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この廃墟群は緑と壁の対比が際立って非常に美しかった。早朝だったからかもしれない。

ナウシカ?
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作ったものはやがて壊れる。

©が入ってない頃のコーラのコップ
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二畳もなさそうな空間に、昭和の遺品が大量に残っている 

商店内部はどうやら地域住民の物置にされているようだった
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向かいの社宅、潜入できそうだったがこの季節ではナタがないと無理であった。
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冬や春なら余裕だろう
お隣さんが側面部をバイク置き場にしていた。中も物置がわりになってるんだろうか。

この奥に、鉱山長邸と重役たちの家が建っている。

そして肝心の理髪店と事務所は、なんと数年前に取り壊されていた・・・
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なんとも味けないなあ・・・ こんなになってしまって
話を聞いたところ、中では最近まで大日如来の補修作業が行われていたという(!)
しかし発注元のお寺が今回の震災で被災したそうで、今も仏さんは帰るに帰れない状態が続いているとか

あの床屋さんが見れないとなるとなんだかモチベーションが下がる・・・
気を取り直して診療所へ

おお・・・
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その廃墟にはその廃墟の魅力があり・・・
床屋が見れないのは惜しいが、診療所も見事な緑の美しさ
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なんてレトロな
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サザエさんの四コマにも出てたなあこのマッサージチェア

シャンデリア と言っていいのかな
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さて、外はひとまず内部へ
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受付兼薬渡口
狭いからか、一つしか窓口がない

注意書き
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少し厳しくはないかこれは

古い病院廃墟には必ずあるこれ
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横にはガスボンベが。地域の集会に使ったのか

なぜかこんな本がおいてある。 
これは文のほうで、横には図説も残されていた
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なんとも簡易なしつらえ
ベニヤ板まるまんま
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室内はうずたかく積まれた段ボールでうまり、そしてわずかに医療器具と思われるものが流し付近に置かれていた
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メガネみたいな形の器具も、病院廃墟にはつきものアイテム

段ボールの中身はなぜか仏教系グッズが多数
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仏壇の錺
なんでこんなものが

これは浄土宗のお経などをまとめた本
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他にも浄土宗のみならず、浄土真宗、法華さん、真言宗、禅宗までさまざまな仏教グッズが無造作に置かれている
なんなんだ? まさか社宅で亡くなった人を葬るときに使っていたものをここへ・・・

さすが時代を感じる
他にもこんなレトロ電化製品の数々が段ボールの中で眠っていた
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これは何枚も撮ったが、光の加減を一番気に入ったのがこれだった
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ベニヤってササクレが爪の間に刺さると電撃のように痛いんだよなあ

ガキの頃、勝手に入り込んで遊んだ近所の倉庫を思い出す
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ここからちょっと上に行くと、こんな施設が
今なお現役で鉱山の負の遺産を背負っている。採算大丈夫なのかなと思ったが、なんでも新技術の実験も兼ねているらしいのでそこらへんはうまくいっているようだ。
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負でも正でもなく、昔話を物語る廃墟たちはただ雨風が処理するに任せ


緑と天井が魅力的な廃墟群だった
今日はこの辺で。