徳島県は海沿いの田舎町。伝説の(?)廃墟こと、かのS診療所をも上回る残留物が未だに残る村医者の跡地を今回探索した。
名を『F医院』というそうで

車を近くの神社に停めて向かう。
P1130135
この風景からしていいですね。 川からケアラシが立つとは四国も寒い世界なのね。
霜だって降りている。

医院前までは若干距離がある。意外に幹線道路沿いの場所で人気もある。
P1130136

(2013年4月19日追記)
この度一年ぶりにこの廃墟を尋ねた所、ものの見事に荒らされてしまっていた。
診察室の回転薬瓶オブジェ、アンチーク調の硝子戸棚は持ち出され、他に物品の移動、破壊もところどころに見受けられる等それはそれはひどい有様であった。
私が訪問した数か月後には当廃墟の位置情報が某サイトに記載された。招かれざる訪問者たちの増加による保存状態の加速的悪化を危惧していた矢先のできごとであった。
とにもかくにも残念で仕方がない…
(追記終り)


表札(加工済み)
昔は町医者の家というと、軒先に赤い街燈があったりしたものです。
P1130138
セミの抜け殻は案外丈夫に出来ているものだ。

かなり大きい家だ。
なにしろ昔の村の開業医だ。金には困らなかっただろう。
P1130250

では、いざ潜入。
P1130156
S診療所に比べて大分広い玄関。待合室を兼ねていたのだろう。

朝焼けがいい仕事している。
P1130204

投薬口と受附?
P1130197
アーチ型とはなかなかシャレている。S診療所より若干西洋風。

此の手の貼り紙は今でもよく見かけますね。
P1130152
患者さん、そんなに来なかったのかしら。

窓口の但し書き
レトロ趣味をしていると『○○は現金』といった言い回しをよく見かける。ホーロー看板で「酒は現金」とか。
P1130153
処方箋はお金を払って書いてもらうものだったのか…
時代は変わるもんだ。

但し書きその2
京都府医師会より言い方が柔らかい さすが幕末から医療に明るかった徳島県である(偏見)
P1130154

さて診療スペースへ
P1130157

その景色に呼吸が止まった。
P1130407
「昔のお医者様」のイメージそのままだ。

しばらく震えながら佇んだのち撮影に移る。
P1130408
と、ここで問題が発生。

…また三脚を、忘れた。 一度でもこう行った場所に入り込んだことがある方ならご存じのとおり、廃墟というものはたいてい薄暗い。三脚なしではブレること請け合いなのだ。
ということで、ここからはボヤけた画像が頻出します。どうか、どうかご容赦ください…。

医療系や教育系資料館でよく見る昔の棚。
こんなものがちょっと壁を越えた先にあるなんて、人は信じるだろうか。
P1130352

鏡と流し台。
P1130159
床に先客が遺した煙草の箱が落ちていた。
それでも大分古い物だったが。

嗚呼、なんたる廃墟美。
P1130414
これは良い写真が撮れた。
しかしまあノイズがひどい。 三脚を忘れたことが実に悔やまれる。

ストロボ撮影
古い廃診療所内のベッドは中身が藁であるものが多いが、こいつもそうなんだろうか。
P1130162

診察机横のカルテ棚
ほぼそのままの状態で放置されている。
P1130163
今のうちに公的機関が資料施設かなにかとして保存に乗り出したほうがいいんでないかな?

上の棚からこぼれたのだろうか。カルテが転がっている。
P1130161
※医院の名前などが出て居たので若干修正しました。

診察用イス。
P1130165
正直これに座らされたら怖い。
昔の医療関係器具はどうしてこう容易に死を想起させるのか。

その正面に診療机と棚。
数々の瓶と謎のアイテムが所狭しと並べられている。
P1130229
S診療所でも見かけた『普通薬』『劇薬』のシールがここにも。
しかし、戸棚の中の薬品は医療薬ではなくなぜかミシンのオイルや潤滑油ばかりであった。

こちらはすべて薬品瓶。
カルテを書く隙間もない程、薬品や医療器具が溢れ返っている。
P1130164

これは注射器か…?
コントで見るような大きさ。
P1130227

そしてこちらは注射針
たぶん使用済み 最初にこの箱を開けた先達は大丈夫だったのだろうか。
P1130226

その横にアンプル
死が隣にあった空間か… なんたるホラーパンク。いやこの雰囲気ならレトロパンクか。
P1130225
昔、こんな昭和初期くらいの木造診療所が出て来るホラー映画を見た気がするのだが思い出せん。

…これは。
P1130168
デザインセンスの高さに脱帽。

朝焼けの強烈な色合いと実にあう。
あまりの美しさにため息がでた
P1130170f

窓から差し込んだ朝焼けが円く並んだガラス瓶に乱反射し、部屋全体を橙色に染めるのだ。
ああ来てよかった 徳島。

こちらは朝焼けの時間帯からしばらくたった写真。
P1130337
廃墟サマサマである。
自動車の走行音が聞こえるほど人気がある場所なのに、自分が普段生きて居る世界ではない気がする。

机から入口方面。
P1130332
実は入口付近が崩壊してきている。
あと二、三年のうちに玄関から診療スペースに入ることはできなくなるかもしれない。

光の芸術。
P1130348
影と瓶、たったこれだけでこんな景色ができるとは。
しかし自分の家で同じような光景を作れるかと訊かれたら無理があるだろう。やはり歴史がないといかんのだ。 歴史が廃墟を造るのだ。(中途半端なロシア語調)

ベットとランプをもう一枚。
P1130328
お気に入り。

反対側から
ああ、本当にいい。 窓や屋根の色合い、ガラスの曇り、外の澄んだ空気と内部の少し淀んだ空気。
P1130338
廃墟美、ここに極まれり。

あまりに気に入ったのでもう一枚。
P1130342
注射器のシリンダーが大量に転がっているのは、やはり使い捨てに近かったから?

例の医療器具別角度
紅い液体は何でしょうね ヨードチンキ?
P1130350
こういうコンパクトで機能的な器具を見ると歯医者さんを思い出す。
実際は眼科と内科をやっていたようだが。

どうやらこの向こう側にも診療スペースがあるみたいだ。

これまたすごい。
薬はもとよりカルテ、投薬録から試験管までまるごと残っている。
P1130355

この机下はこんな感じ
手前と右奥の瓶は一体なんなのか非常に気になる。
P1130363
形状からホルマリン漬けを思い出すが…

体重計?
P1130365
壮丁検査とかに使ったのかもね。

本当に光の加減が素晴らしい
P1130356
良い時間帯にあたったものだ。

そして書籍の山
古本好きにはたまらない。
P1130372

医家だけあって、所蔵はもちろん医療関係が多い。
P1130366

これは面白い。
P1130371

お医者様は几帳面。コーナー別にしてる。
P1130381
他にも『薬』『内科診断斈』『内科』『解剖』『生理』『眼科』『婦人科』『外科』があった。
実質的に綜合医だったのかもしれない。

本だけではなく、この部屋にはカルテや投薬録など大量の書類が遺されている。
その中にはこんなものも。
P1130376
画像加工ソフト買おうかしら・・・
でも撮影画像は大きさ以外は加工しないのがモットーなんだよ。

(2014年1月2日追記 モットー?そんなもんは2013年に置いてきた)

さてさらに奥へ。
とはいっても方角は玄関付近なんだが。
P1130357
これもまた朝焼け。
向いの戸棚はまたもや薬品庫状態。
P1130361
S診療所でもよくみたアンプル状薬品が大量に。

こういうイス一つをみても、現代のものと比べて美学に差があるような。
P1130362
戦前日本は道具や建物の使い勝手もさることながら芸術性も高くしていた気がする。
銀行や役所なんかの公的施設のデザインなんて一番わかりやすい。 高度成長期しかりバブル期しかり、なんだあの無味乾燥というのか面白味も無い「箱モノ」としかいいようがない建物は。

ああボヤけてる・・・
P1130367

さて、生活スペースへ続く廊下へ。
って床抜けてるじゃないか。
P1130251

しかし、足をのせても意外としっかりしている。
P1130419
投薬口の裏に向かう。

またしても朝日が美しい・・・
P1130265
こんな場所が仕事場だったらどんなにバイタリティが湧いてくることか。

そして相変わらず大量の薬品類。
時間がなかったので一つ一つ撮影することはできなかったが、いずれ個々の薬品のまとめ記事も載せたい。
P1130267
まとめました↓
http://hanatare-ruins.doorblog.jp/archives/51767050.html

発見当初のS診療所をも超えるであろう残留物の量。
とにかく薬瓶が多い。
P1130270
飯釜みたいなのはなんだ?

フラスコ型の薬品にロマンを感じる。
P1130269
くそ 「戦前」にあこがれるこの軽率さはなんなのだ。
手前右の赤いのはなんでしょうね たぶんヨードチンキかなにかですよHAHAHA

メモ書き?
P1130259
本業なら薬剤の調合割合なんて頭に入れとかないとダメなんじゃないのか?

内用木札って、S診療所にあったアレのことだろうか。
P1130260
「キルクの点眼器」というのも気になる。

これは劇薬棚。
もちろんカギ付です。
P1130263
だが破られている。
アトロピンなんてあったが大丈夫なのか…? (たぶん変質しているだろう)

こちらは普通薬。
P1130274
『ツ散』とか『ア散』とか、さっきからよくみるが何かの略号だろうか?
求む、情報。

そして恐ろしいのはこれで終らない薬剤の量。奥にはこんな光景が・・・
なにこれ怖い。
P1130279
軽くC兵器作れそうなレベルなんだが。
もちろん薬剤はもう変質してしまっているだろうがそういう問題じゃない。家系が絶えたなら仕方ないが、廃墟になった時点で誰か片づけようとしなかったの?

豆粒大の薬瓶から、一升瓶並のものまで幅広く品ぞろえ。
こんなのが一畳ほどのスペースに設けられた棚に隙間なく収まっている。
P1130280
見る人がみたら宝の山。

あの青い瓶、いいなあ。
P1130281

最近誰かが倒したのだろうか。
P1130282
六角の瓶のフタかあ。 

乳鉢
理科室アイテムでおなじみ。
P1130284
それにしても、なんでまた廃棄しなかったのだろうか。

聞きこみしたわけでもないのであくまで憶測だが、おそらくS診療所と同じで子孫の方が別の場所に移り住む→倉庫代わりでいいか→いつのまにか放置コースではないだろうか。
P1130286
人はこういう異質な空間に多少のドラマを見出してしまう。
しかし現実はそこまで物語であることは意外と少ない。事実は小説よりも奇なりとは、廃墟になった要因にはあまり当てはまらないものだ。
時間があればもう少し聞き込みできたんだけどなあ・・・ ちきせう。

昔の点滴装置。
こういうものを見て居ると木造校舎や診療所が出て来る作品が無性に読みたくなる。
P1130287

ワインセラーのように並ぶ薬品。
これなんて気化せず残っていると思うんだ。 S診療所のように強烈な薬品臭もしないし。
P1130393
めぼしい危険薬はきちんと処分されていたのでまだよかったけど。
・・・クロロホなんとかさんを見かけたような気もするが忘れました。

容量の関係でその2に続く
http://hanatare-ruins.doorblog.jp/archives/51764502.html