北海道松前郡福島町千軒地区。かつてここには莫大な量の砂金が眠っていた。
 古くは奥州藤原氏の中尊寺金色堂の金箔に使われたことにその名が初まり、鎌倉時代には荒木大学がこの砂金を発見。和人による採掘が本格化したと『大野土佐日記』にはある。その後松前藩により管理、採取されるが其んな渦中で採掘作業に従事しながらも隠遁生活を送って居た隠れキリシタンが殉教するなど、今なおその遺構、遺物が川底山中から見つかっている。

 川石を積んだ堤防、木船の竜骨、砂金堀が使ったカッチャ(砂礫をどけるクワのような道具)、果ては昔誰かが渡河した際に落したのであろうか。「文政一朱金 角一朱」という江戸時代のお金も出土した。
これらのこともあってか「殉教したキリシタンの隠し財宝がどこかにある」という伝説が実しやかに伝わり、今でもその伝説を信じて探す者もいるというが…
 財宝眠る知る人ぞ知る地、それが千軒!

しかしそんな見どころたっぷりな場所で今回訪ねるのはやはり墓地、つまりは家紋調査である。 がっかりしないでください。詳しく取り上げるとシロが荒らされるというので怒られるのだ。
千軒峠の松前線跡はこちらから
http://hanatare-ruins.doorblog.jp/archives/51648751.html

『中輪に違い矢』
P1130879
中輪を合わせたものは珍しいのでピックアップ
使用家は名越さん。

ここは10軒あるかないかの小さな墓地だった。歴史ある土地だからと云って今の住人は江戸時代から住んでいたわけではないそうだから。
地元の詳しい方によると、明治時代に岩手県から砂金を掘るために渡道したそうだ。
なんやかんやで砂金関係ではある。

『糸輪に三つ盛菊』
P1130883
使用家は笹島さん
菊家紋の中でもどこか洗練された高貴さを感じる家紋である。

『丸に折れ枝柏』
P1130884
随分珍しい。
枝や蝶の変化意匠は家紋辞典にこそたくさん記載があるが実際探すとさっぱり見かけない。『日本家紋総鑑』には収録されていた。

使用家は笹島さん。


約10基の墓のうち、結果3つが興味深い家紋であった。実に素晴らしい結果。
どんなに小規模な土地だろうと、多数派家紋ばかりとは限らない。珍しさと土地に法則は存在しない。

これだから家紋調査は面白いのだ。